講座【ひとりでできるkindle出版】第4章「執筆」その2 論理をつくる

書く前に考えること。
書き終えて読み直すこと。

「論が理にかなっている」

 

あなたはなぜ、本を書こうと思いましたか?

最近多く聞くのは、
「自分が苦労して経験したことを、知ってもらい、誰かの役に立ちたい」
「誰かの励ましたい」
そんな動機からだと言う方々の声です。

自分の主観に基づいた考えを表現して、誰かに読んで欲しい。

そう思ったからではないでしょうか?

何かをやろうとする時に「自分の想い」をきちんと伝えることは大事なことです。

書く前に考えること
書き終えて読み返すこと

優れた素敵な文章はどのように書かれると思いますか?
この質問に100%答えれる人はいません。

文章は人の心の動きによって生まれ、人の思惑に寄って纏まられるものだから、
ある意味、生き物です。
人の数だけ個性があり、自分の手に馴染んだ書き方があります。

文章は自由に書かれなくてはいけません。

書く前の段取り

1、テーマをどうつかむか

一つのまとまった文章には必ずテーマがあります。

テーマのない文章はただおしゃべりとして話しているだけです。
文章は、何かを骨子がある内容を読む人に伝えるもので、
テーマのない文章はまとまりのない独り言にとなります。

テーマは書く前に考えて、頭に入れておかないといけません。

テーマの掴み方は?

豚と真珠

草原に放すやいなや、豚は食いはじめる。
その鼻は決して地べたを離れない。
彼は柔らかい草を選ぶわけではない。
一番近くにあるのにぶつかって行く。
スキの刃のように、またはめくらのもぐらのように、行き当たりばったりに、その不撓不屈の鼻を前に押し出す。
それでなくても漬物ダルのような形をした腹を、もっと丸くすることより考えていない。
天気がどうであろうと、そんなことは一向お構いなしである。
さっき、肌の生毛が、正午の日差しに燃えようとしたことも平気なら、今また、あられを含んだあの重い雲が
草原の上に広がりかぶさろうとしていても、そんなことにはとんちゃくしない。
そういえば、カササギは、バネ仕掛けのような飛び方をして逃げて行く。七面鳥は生垣の中に隠れ、初々しい子馬はこの日陰に身を寄せる。
しかし、豚は食いかけのもののあるところを動かない。
彼はひと口も残すまいとする。
落ち着きがなくなって尻尾をふるでもない。
ひょうがからだにばらばらと当たると、ようやく、それも不承不承うなる。
「うるせえやつだな、また真珠をぶっつけやがる!」

 

この文章のテーマは何か、というと「ものを食うことしか頭にない豚の愚かさ」「愚かなものには美の価値がわからない」

そんなところかもしれません。
でも、これは読んだわたしたちが見つけ出したテーマです。
書くまえは、より具体的な形でつかむこと。

テーマは大事ですが、そこにだけ囚われてしまうと豊かな文章は生まれにくいのです。

文章に彩りを与えるのは細部で、最初から「愚かな豚」と訳してしまうと、豚の姿を捉えることができないかもしれません。

草原に放すやいなや、豚は食いはじめる。
その鼻は決して地べたを離れない。

こんな文章はそんな観念からは決して生まれません。

 

愚かな豚は、別の見方をすると、たいした生命力の持ち主です。
生存競争の激しい今のような世界では、たくましい優秀なやつかもしれないのです。

だからこそ、

ひょうがからだにばらばらと当たると、ようやく、それも不承不承うなる。
「うるせえやつだな、また真珠をぶっつけやがる!」

この場面が生きてきます。

豚は愚かなだけでなく、具体的な体を持ち、愛すべき魅力を備え、場面の彩りの中だけで生きている。

作者はこれをイメージとしてあらかじめ浮かべている。
こういうのは、書いている途中で成り行きに任せて作ることは無理です。

テーマを考える時に、自分が書こうとしている話のイメージを掴んだ上で、プロットを作るといいです。

考えなくてもいいけれど、考えないでは読み進めることができないもの。
これがテーマの定義です。

この難しい概念のモノを作るには、まずプロットを考えることが大事なんですが・・・。

情報がボリュームがありすぎてなかなかわかりづらいですよね。

わたしたちは、子供の頃より作り話がうまかったのですが・・・。

まずは、そのことを思い出して欲しいのです。

それからどうした、それからどうした。
そう思って繰り広げられる、妄想の世界。
頭の中で進んでゆく具体的な場面から、生き生きした話は生まれてきます。

2、文体はどう作る

文章には必ず文体があります。

文体と文章は離れているものではありません。
文体がそのまま文章です。

例えて言うと、文体はしゃべり方だと思います。
わたしたちは、普段から、話の内容によって、話し方を変えています。

プライベートとビジネス上では違いますし、
嬉しいときと悲しいときと腹が立っているときと気持ちの良いときと同じ口調で話す人はいません。

打ち明け話には打ち明け話の話し方など、

その時々で、ふさわしい文章、ふさわしい文体があります。

だからわざわざどんな文体を作るかなど、戦略的には考えない方がいいのです。

考えを進めやすい文章を書いてください。

3、書く前に徹底的に調べる

何か書くときには、とにかく本、インターネット、知人、インタビューなど、ありとあらゆるところから、題材に関するものを収集します。

書くために調べるということは、深く正確に書くためにも当然のことなのです。

ノウハウ本的な論を述べないものには必ず必要になりますが、文学的な文章にも必要だと思っています。

小説のプロットを考える時に、何かを調べることで何かを知り、そこから一気にプロットが出来上がるということもよくあることです。
プレゼントに関する小説を書こうとして、ふと、百科事典で「靴」のことを調べると、ヨーロッパでは娘の父親が結婚するときに相手の男性に娘の靴を手渡していたということを知りました。

若い娘の足を入れていた華奢な靴を、父親の手で婿の手に贈られる。
なんとも淫陽で美しい残酷な感じもする微妙な話だったので、このエピソードを小説の後半に入れてみました。
プレゼントの話を書くのに、靴を思いついて、わざわざ百科事典を引くということをしました。

長編を描くときは、どんなところに何が潜んでいるかもわからないので、思いついただけの資料を調べ尽くします。歳時記から百科事典まで、その他手当たり次第の資料、文献を読み漁ります。

でも、そのうちその作品では使わなかったメモや資料が、そのうち別の作品で日の目をみたりもするのです。

今はインターネットも利用できるし、ChatGTPという便利なものもあります。

昔とは雲泥の差の情報量がすぐに手に入るいい時代になりました。

わたしはかつて、師匠に言われていました。
「知識欲と好奇心を手放さないこと。そこから贈り物がやってくる」と。

例えば、わたしが一冊本を書くときには、その10倍くらいの文章を書いています。
そして、さらにはその10倍くらいに文献を読んでいます。

机の上に風呂敷を広げた、自分の知識を、どんな切り口で切り取っていくか、そこは書き終わってからの編集力が必要になってきます。

書き終わってからやること

4、理にかなっている

論理的な文章を書くには、論理的な思考が必要だと考える方もいます。

文章力がない、内容が伝わらないと感じている方は、まず伝わる文章と伝わらない文章を見分けることが大切です。
伝わらない文章とは、「論理的展開ができていない」「文章が長い」「文法が正しくない」「言葉足らず」の4つの要素に分けられます。

一つの結論を伝えるときに結論の裏付けを示す、事実や前提の組み立てのことを言います。
「〇〇だから(事実やエビデンス)、~です。」のように、理由と結果を述べて書き進める方法です。

伝わらない文章は、論理展開していないため、読み手が分かりにくさを感じやすいのです。
論理展開の基本的パターンには「演繹方(えんえきほう)」と「帰納法(きのうほう)」の2つがあります。
難しい言葉に感じるかもしれませんが、日常会話で無意識に活用されている方法です。

「AはBである。BはCである。よってAはCである」というように、AとBという情報に基づいて、Cという結論を導き出せます。
こちらは演繹法です。

演繹方(えんえきほう)

「人は必ず死ぬ」
「ソクラテスは人である」
「ソクラテスは必ず死ぬ」

演繹法は、前提には誰もが知っている事実や普遍的事実が使われる傾向があります。

帰納法

多くの事例に共通することに注目し、共通点から分かる根拠をもとに結論を導き出す方法です。
複数の事実や事例をあげることによって、読み手に納得感を与え、導き出される結論が一般的になります。
「Aという事象がある。Bという事象がある。つまり〇〇は~と言える。」というように、複数の具体的な事実から同一の傾向を抽出し、結論に持っていきます。


「アメリカの経済が低迷している」
「日本の経済が低迷している」
「ヨーロッパの経済が低迷している」
「よって、世界の景気が低迷している」

文章を書くときは、論理展開をうまく活用しましょう。

5、文章の中の空白

「理にかなっているか」を考えることは文章の表面的な直しです。

でも、ここでは根本的に削除ということについて考えてみます。

何も書かれていない空白とそれと同じような箇所はないか、ということを考えます。
最初のうちはどこも大事で一生懸命書いているように見えるけれど、文意を辿ると重複しているだけのところがあったりします。

もしくは、書くほどのものでもないことに字数を費やしていたり、無意味だったり。

そんな箇所は白く見えます。
文章は書かれているけれど、内容は薄いどころか、無いに等しいからです。
そんなところを思い切って削除します。

書き足す効果より文章を削り取ってしまう効果の方が大きい場合があります。

そして、文章は書き足すよりも削る方が、はるかに簡単です。

だから、わたしは最後に残った文章の10倍は文章を書くようにしているのです。

贅肉を取ると人の身体がどのようにシャープになるかってところだと思います。
ダイエットして贅肉を減らすことに憧れても、自分の平板な文章を減らすことには、抵抗しがちです。

6、自分のクセを知る

文章の上達させるために、一番大事なことはここだと思います。

クセというのは、我流のことです。
自己流で、悪癖で、個性とは違います。

でも、本人は個性だと思い込んでいたり、特には文芸的な表現だと自分で思い込んでいたりもするのでタチが悪いのです。

このクセは簡単に発見できます。
好んで、観念用語を使うので、自分以外の人が読んだら、すぐにわかります。
良い、と思っているのは自分だけで、誰が読んでも違和感しか起こりません。

この空間に愛する女性が永遠に現れないことを、僕は悲哀の中に認識しなければならなかった。

こういう文章は若い人や学生に多いです。
わかりやすい分、本当は直しやすいクセだけど、案外長年の体質となって改まらなかったりします。
自己のアイデンティティのように思って逆に手放すことをしません。
ただのクセなのに、です。

文章を書くということは、自分以外の他人から、その文章の指摘を受けるということでもあります。
読んでもらって、注意を受けます。
誤りを正されます。
けなされます。

そして、文章を書き続けるということは、これらをずっと指摘を受けることです。
あるいは、誤りを正され続けることです。
けなされ続けることなのかもしれません。

クセのない、わかりやすい、正確な誤りのない文章を書くということはとても難しいのです。

だからこそ、出版社や新聞社には、編集者という人がいて、校閲部があって、校正という作業があるのです。

他人に注意されるのが嫌なら、自分で完璧な文章を書き、原稿を出せばいいけれど、それはほぼ不可能です。
注意を受けたら、改めれるようになるように自分の心持ちを素直に変えるしかありません。

良い文章は、上手な文章とはまた別物です。
それは人の心に響き入り込んでくる力を持っています。
そんな文章が勉強すれば、いつでも自由に書けるようになれる、というものでもありません。

それは、たまたま作者の想い、狙い、個性や性分など、文章力が思いがけない合体して、それが功を奏した時にできるものだとわたしは思っています。

良い文章が書けた時は、万歳して喜んだらいいし、悪い出来の悪い文章の時は、たまたま作者の想い、狙い、個性や性分などの文章力が合体し損ねたんだと、次に繋げればいいと思います。

たとえうまくできなくても、自分の人格を損なうものでもありません。
注意されても、傷つくこともありません。
指摘を受けた箇所を正して、できる限りの書き直しをします。

それだけでいいのです。

書いて、指摘を受けて、その度に傷つくのはやめにしましょう。
文章は自分の充実のために書くもので、自分のもうひとつの実現のために書くものだから。

WORK(第4章-2で取り組む課題)

ひとりでできるkindle出版 第4章-2 WORKシート

第4章2週目解説動画スライド資料(書籍)

第3章で作った目次に従って、とにかく書き進めていきます。
わたしは「はじめに」の文章をとても大事にします。
その中でも「はじめに」の中の初めの一文。
ここをものすごく考えます。タイトルは(仮)で作っておいて、最後につけます、これがまみ助流です。

WORK1 第3章で作った目次に基づいて執筆します。

順番はどこから書いてもいいと思います。
題名とテーマが目次です。
第1章を全部一日で書いてもいいですし、第1章の小さな項目を1日分としても構わないと思います。
まずは今日はいつまでに書き上げるかの戦略を立てましょう。
どう書き上げていくかの計画も合わせて考えてください。

上記の教科書を読んで、どう思いましたか?
書く前と書いた後の考え方の流れを書きました。

文章を執筆しないことには、教科書の内容は水の泡になります。
だからどんな状況でも書き続けてください。

WORK2〜7 WORK1で立てた戦略と計画に基づいて、執筆です。

こちらはご自分で立てた戦略を毎日書き進めてもらう、そんなWORKです。

目次の通り(小見出しを含む)に最初から最後まで、小見出し似た指定200文字から400文字で書ききる。
・毎日一定量以上の執筆を行う練習
・誤字脱字はあまり気にせず、一定上のアウトプットを行う

最後にヒトコトコラム

他者の苦労や困難を知り、
自らの経験を通じて励ましや支えとなることが、
人間関係や社会全体の強化に繋がると感じています。

自分の言葉が誰かの心に触れ、
ポジティブな変化を起こすことができれば、
それが書くことの真の価値かもしれませんね。

ですから、本を書くことは
言葉の力を通じて人と人を繋げ、共感や理解を促進し、
ポジティブな変化を生み出す一環としての挑戦だと感じています。

GOOD LUCK!