講座【ひとりでできるkindle出版】第4章「執筆」その1 翻訳する

原稿を書いていく上で、注意点をこの第4章では伝えていきます。

文章には「書き言葉」と「話し言葉」があることはご存じでしょうか?
今まで第1章から第3章まで書き出していただいた文章はどちらが多かったでしょうか。
今回は「書き言葉」と「話し言葉」の違い、さらなるテーマの明確化について教科書とWORKで学んでいただきます。

コラム / どうやって書けばいいの?

文章を書く際には、伝えることと伝わることの違いを理解することが重要です。

伝わる文章とは、読者にとって理解しやすく、意図がちゃんと伝わるということを指します。
このことを達成するために、初稿では自由に思いを表現することが大事です。

要するに、まずは自分の好きに書いてOK!ということです。

文章でなくて箇条書きを活用することで、思考を整理し、冗長な表現を避けることができます。
箇条書きで主要なポイントを並べて、その後、詳しい説明を加えることで、より分かりやすい文章は作成することが可能です。そうは言っても文章の全体構成も非常に大事。
伝わる文章を作るためには、何を伝えたいのか、どのように構成するのかを事前にしっかり考える必要があります。

一方で、本の文章を書く時には、直接話した内容をそのまま文章にしてしまうと問題です。

一人称(わたし、ボクなど)の使用や語尾の統一は必須で、統一性には注意を払う必要があります。
文章全体の流れやテイストを統一することで、読みやすい文章になります。
SNSでよく見られるような語尾や表現の不統一は、本の文章としてはあまりよくない例です。

デスマス調とデアル調が混じっている文章など・・・。

また、文章が語りかけるスタイルで書かれるか、論説文のように書かれるかに関わらず、選択したスタイルは一貫している必要があります。
本の文章においては、特に書き方の統一性やスタイルの選定が重要となり、これらの要素が読者に正確に伝わる文章を作成する鍵となります。

文章の基本構造を考える

「書き言葉」と「話し言葉」の違いを認識する大切さ

わたしのライターの先輩が、こんなことを言っていたことがあります。

「映画とか、ドラマを観ていて、セリフがくさすぎるって思うことあると思わない?」

説明的で、わざとらしく、いかにも芝居くささが残るセルフを脚本家は役者に語らせます。
わたしの中ではくさいセリフと言えば、「スチュワーデス物語」の以下のセリフをどうしても思い出します。

  • 「私はドジでのろまな亀です!」
  • 「やるっきゃない! やるっきゃない! やるっきゃない!」
  • 「教官!」

リアルタイムでテレビ放送されていた頃、わたしはまだ小学生でしたが、このドラマで堀ちえみは、その初々しい演技とクセの強いセリフが注目を集め、多くのモノマネや流行語にも取り上げられました。
全23回の放送を通じた平均視聴率は約20%、最高視聴率は26.8%を記録する高い視聴率を確保しました。

新聞であれ、書店に並ぶ本であっても、中高生の書く作文でも、そこには「話し言葉」そのままで書かれた文章はほとんど存在しません。

どんな文章でも、なんらかの「書き言葉」で書かれています。

「〇〇である」「〇〇なのだ」は、文章ではよく使われる語尾だけど、それを「話し言葉」の中で使う人はいません。
文章の中で使われている以上、明らかにそれは「書き言葉」です。

今わたしが書いている、この教科書の書き方「◯◯なのです」と言う言い回しも、実際の会話では「〇〇なんです」と発音されます。

日常会話の中では、「◯◯なんですね」「◯◯なのよ」と、終助詞の「ね」とか「よ」とかをつけたりもします。
このように、わたしたち日本人は、言文一致にはなっていない二重の言語空間に生きています。

一方、英語に関しては「書き言葉」と「話し言葉」が近いと言われています。

外国では、講演したものが、ほとんどそのままの形で書物になり、それが専門家の検討にも耐えるものであるのが普通であるが、わが国では講演速記をまとめた本は、はじめから書かれた原稿による本とは文体が違うのはもちろん、まるで別種の調子を持っている。
外国語に比べると日本語がいかに言文不一致であるかがまざまざとわかる。『日本語の論理』(外山滋比古著/中公文庫)

役者たちは、脚本に従って、日常話している言葉とは違った「書き言葉としてのセリフ」を話します。
自然な振る舞いとは違って、自分の中「お芝居像」を作ってカメラの前に立ちます。

さらには滑舌なども、観ている側に聞き間違いがない言葉遣いが求められます。
なので、どうしても不自然なセリフになってしまうのも頷けます。

これらの現象は決して脚本が悪いのではなく、「書き言葉」と「話し言葉」の乖離が引き起こしているのかもしれません。

だけど、面白いのですが、文章の書き方の本では、

「話すように書きましょう」
「思ったとおりに書きましょう」
「感じたままに書きましょう」と語られ、

学校の作文指導でもそのように教えられています。

いろんな指導方法はあると思いますが、言文一致してない以上、「書き言葉」と「話し言葉」翻訳する意識は一定以上必要なことであると思います。

言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション

目は口ほどにモノを言う。

ではありませんが、言語的コミュニケーションは「ことば」ですが、非言語的コミュニケーションはその「ことば」以外全てのことです。

声の大きさもそうですし、声のトーンも、身振り、手振り、視線、表情、体の姿勢、あげればキリがないほどにあります。

文の中に

「え? 何?」

という言葉があったとします。
これが鍵かっこ「」で括られているから、誰かが話したセリフだと認識します。
疑問詞?がつけられると、誰かに聞き返しているセリフだと理解します。

だけど、「え? 何?」だけでは、そこに込められた感情まではわかりません。
もしかしたら、怒っているのかもしれません。
嬉しい知らせに喜んでいるのかもしれません。
全く違う感情で対極にありながら、どちらの可能性もある、この言葉。これだけでは判断できません。

声や表情が入って初めて、理解される不完全な文字ということになります。

文字そのものには、感情が伴いません。
音もなく、匂いがあるわけでもなく、手触りすらない無機質なものです。

じゃ、それを書き言葉へ翻訳していくにはどうすればいいのでしょう?

面白い文章を書きたい、とか。
豊かな表現力を身に付けたい、とか。

それができれば文章が上手くなると思っている方がいたら、それも間違いではありませんが、もっと先の話です。
先に絶対にやらないといけないことがあります。

「論が理にかなっている」そんな文章を書くということです。
つまり、論理の構造を考えることです。

論理の軸が通ってなければ、どれほどまでに美しい文章を書こうとも、豊かな表現力をつけようとも、読者は混乱して迷子になってしまいます。
わからなければ途中で読むのをやめてしまうでしょう。

論理の軸が通って初めて、読者は迷わないで、ゴールまで辿りつくことができ、深い納得と共に本を閉じることができるのです。

※「論が理にかなっている」この話は(第4章の2)次の項で詳しくお話します。

プロとアマチュアの違い

物書きという職業は、一種の錬金術師だと思います。

言葉や文章には、無料のものと有料のものがありますが、
言語は伝達の道具で、自分以外の世界を認識するための装置なんだと思います。

誰もが使いこなせる道具なのですが、
そこからなんらかの付加価値を引き出すのが作家の仕事です。

ありふれた道具でも、その人の手に掛かるとお金が生まれる。
まさに錬金術師ですよね。

自分が秘密にしておきたいこと。
自分の恥になること。
これこそが他人が読みたいもの。

自分が痛みを伴ってアウトプットするものこそ、高い価値があります。
わたしもプロになってからも、その態度で仕事しています。

こうした覚悟とサービス精神が伴っていなければ、
作家としてはやっていけないのだと思います。

話すことは『ゴミ』を撒き散らすこと

わたしは人と話す時、自分が気持ちよく『悦』に入ってしまうとダメだといつも感じています。

自分が気持ちよくなってしまっている時、聞いてもらって自分はスッキリしているかもしれませんが、好意で聞いてくれている人がいるワケです。
その人はあなたのことが好きで知りたい!と思って聞いてくれているのかもしれません。

とてもいい人であれば『聞いてよかった』と言ってくれるのかもしれません。

話してスッキリしている時って、自分自身の汚いモノ、ブラックな部分を垂れ流しているわけです。
そんなものをもらっても、人は喜びません。

どちらかが一方的に話し続けてしまっていても、どちらかが疲れてしまします。お互いのWin-Winにならないといけません。

文章もそうです。
ありのままの自分を出すのはいいのですが、
出すことで『悦』に入ってしまうような文章はよくないのだと思います。

WORK(第4章で取り組む課題)

理にかなった論理構造を持つ文章を書くためには、以下の7つのワークを考慮してください。
これらのステップを追うことで、読者が混乱することなく、納得して文章を理解できるようになります。

ひとりでできるkindle出版 第4章WORKシート

第4章1週目解説動画スライド資料(書籍)

第4章3週目解説動画スライド資料(書籍)

WORK1 テーマの明確化 (Clarity of Theme)=「話すべきこと」をはっきりさせよう。

何について話すのかを考え、それを簡単に説明できるようにしよう。

WORK2 論点の整理 (Organizing Key Points)
=「大事なポイント」を整理しよう。

話す内容をいくつかの大切なポイントに分けて、それぞれがどう関連しているか考えよう。

WORK3 論理の流れの構築 (Building Logical Flow)
=「話の順番」を考えよう。

話すときには、ポイントを上手に続けて話す順番を考えることが大切です。

WORK4 論拠と根拠の提供 (Providing Evidence and Support)=「証拠」を出そう。

話を説得力あるものにするために、具体的な例や数字を使って説明してください。

WORK5 反論への対応 (Addressing Counterarguments)
=「逆の意見」にも考えを巡らせよう。


相手が逆の意見を持つ可能性があるなら、それに対してどう反論するか考えておこう。

WORK6 論理的な結論 (Drawing Logical Conclusions)
=「結論」を出そう。

話の最後に、最も重要なポイントをまとめて、結論を出そう。

WORK7  文章全体のレビューと修正 (Review and Revision of the Entire Text)=「最後に見直し」をしよう。

終ったら、全体を振り返り、もっとわかりやすくするために修正を加えよう。

これらのステップを踏んで論理的な文章を構築することで、「論が理にかなっている」という目標に向けて進むことができ、中学生でもわかりやすくて論理的な文章を書くことができます。

コラム/物語(ストーリー)のススメ

書籍は物語があったら、とても訴求力が高い本になります。(また書き続けていきます)